盆休みの読書日記

諏訪 幸子

2007年08月12日 14:24



お盆らしい題です。吉村昭の「死顔」、遺書といわれる短編集です。
夏休み、何冊目かに読んだ本です。
短編は、アメリカのものをずっと読み続けていてその完結度の高さが
好きな文学形態です。

「星への旅」で太宰治賞をとりデビューした作家で、
その後、「羆嵐」のようなノンフィクションの様相をもつ男らしい
作品を書く作家になっていった印象を持っています。

初期の星への旅は集団自殺を描いた作品で、
その中で、個の死が生との境目なく意識を持って
続いてゆく、ロマンティシズム(本当の意味での)
の流れをおもわせる印象に残る作品群でした。
今回の作品集は当然「死」をテーマにしており
一番初めの「星への旅」とパラレルになる作品群です。
予想したとおりでしたので、
しっかりと読めました。
一人の作者のデビューから遺作まで
付き合う事ができて、満足しています。

妻が津島節子であったのは
実は知りませんでした。
津島節子の作品は随分、読み重ねて
きていますが・・・。
そうだったんだ。。と思いつつ、その義父であった
作家から遠くへ遠くへと歩んだ作家でもあったのかと
改めて、吉村昭という作家のことを感じたしだいです。
死顔を少し見てしまった気がします。
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